~第三回コラム~ 材料に添加される各種添加剤について・・・
2016.03.17(木)
今回は前回に引き続き、材料に添加される各種添加剤についてお話しします。
①造核剤 これをPP、PET、PA、POMなどの結晶性材料に添加すると、それが結晶核となって金型内での結晶化の促進、成形サイクルの短縮、微結晶化による透明性やトライボロジー特性の改善に寄与する。無機系造核剤としてはタルク、シリカ、グラファイト、酸化マグネシウムなど、有機系造核剤としては安息香酸カルシウムそのほかのカルボン酸金属塩、ベンジソデンソルビトールやその誘導体、そのほかポリマー系のものもある。
②帯電防止剤 帯電防磁剤はプラスチック製品の表面の電気抵抗を低下させ、静電気の発生を防止するために成形材料に添加したり、あるいは製品表面に塗付する薬剤である。各種界面活性剤、水溶性ポリマー、無機塩、多価アルコール、金属化合物、カーボンなどがあるが、このうちガチオン活性剤がもっとも多く使用される。
③架橋剤(硬化剤) 製品を三次元網目分子構造につくる場合は、反応性の成形材料である熱硬化性樹脂材料を用い、架橋剤ないし硬化剤を添加する。個々の樹脂により架橋機構は異なり、フェノール、ユリア、メラミンの各樹脂ではヘキサメチレンテトラミンが硬化剤として使われ、エポキシ樹脂では有機酸無水物やポリアミン、また不飽和ポリエステルでは共存スチレンが架橋剤となり、そのラジカル共重合反応を開始する有機化酸化物が硬化剤ともいえる。
④発泡剤 発砲プラスチックをつくるには無機または有機系の発泡剤を成形材料に混合しておくか、または加工工程内に成形材料に添加する必要がある。分解性発泡剤と揮発性発泡剤に分けられ、分解性発泡剤のうち無機計では分解により炭酸ガスとアンモニアを発生する炭酸アンモニウム、分解により炭酸ガスを発生する重炭酸ソーダがその代表例である。有機系ではアゾ化合物、スルホヒドラジド化合物、ニトロソ化合物、アジド化合物があり、分解により主に窒素を発生する。このほか、炭酸ガス、一酸化炭素、アンモニアを副生するものもある。通常樹脂原料と混合し、成形温度において樹脂内で分解させる方式により発泡プラスチックが造られ、この種の発泡剤は広く用いられている。揮発性発泡剤は物理的発泡剤とも呼ばれ製品を汚染(着色)せず、かつ価格も安いなど、分解性発泡剤より優れた特徴があり、ポリウレタン、ポリスチレンの発泡に用いられる。近年オゾン層破壊の進行を止める環境保全の観点からフッ素含有発泡剤の使用は厳しく制約を受けて代替品が開発されている。超臨界炭酸ガスを用いる手法も開発された。超臨界状態で炭酸ガスを溶融成形材料に圧入すると溶融粘度が下がり成形機内での流動性が改善され、その後除圧によって数μmオーダーの微細な無数の発泡を起こすのでマイクロ発泡技術あるいはマイクセルラープラスチックとして普及されはじめた。
⑤抗菌・防塵剤 細菌(バクテリア)の発生発育を防止し、それに起因する害を未然に防止あるいは回避する抗菌剤のうちプラスチックに使用されるのは、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、シリカ、リン酸ジルコニウムなどに銀を担持させたものとか、酸化チタン光触媒などが無機系として知られる。有機系としてはニトリル誘導体、イミダゾール誘導体、トリアジン誘導体、スルホン誘導体、ピロール誘導体、フェノール誘導体などがある。ほかに天然系の抗菌剤にはヒノキチオール、キチン、キトサン、孟宗竹抽出物、茶カテキンなどがある。抗菌剤は成形材料に練り込むほか、後加工としてコーティングする場合がある。
⑥相溶化剤 互いに混じり合わない2種以上の成形材料からポリマーブレンドないしアロイをつくる場合、両成分と親和性のある成分を有する非反応型相溶化剤(たとえば両成分から成るブロック・グラフト・コポリマー)か、あるいは両成分のいずれかまたは両方と反応性をもつ反応型相溶化剤を添加する必要がある。反応基としてはカルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基、イソシアネート基などが用いられる。
⑦充てん材(フィラー)プラスチックに添加して、強度、耐久性などの改善・高性能化、特殊機能の付与、あるいは増量(コスト引き下げ)の目的を果たす広範囲の物質で、添加割合が多い場合は「添加剤」の域を越えて「基材」(熱硬化性樹脂材料の場合)とも呼ばれ、得られたものは「複合材料」(コンポジット)となる。
充てん剤となる物質には①シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタンなどの酸化物、②水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物、③炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、④ケイ酸カルシウム、タルク、クレイ
マイカ、モンモリロナイトなどのケイ酸塩、⑤窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの窒化物⑥カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、カーボンナノチューブなどの炭素類、⑦そのほか各種金属粉や木粉、パルプ、アラミド繊維、など種々の無機物、有機物などがある。近年急速に注目を浴びているのは⑤のクレイ仲間で、ナノコンポジットとして少ない添加割合でバリア性付与など顕著な効果をあげることが知られている。
前述の複合体領域で用いられる充てん材はガラス繊維、炭素繊維などの強化材であり、それぞれガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチックとして一群の複合材料分野をつくっている。
まとめ 以上の添加剤ないし配合剤はプラスチックの副資材として成形材料の組織の一部となってきわめて重要な役割を果たします。これらを上手く組み合わせ、まだまだ様々な用途開発が出来るのではないでしょうか。
蛇足となりますが先日、東京ビッグサイトにて行われました〈第8回 カーエレクトロニクス技術展〉に行ってきました。今回は自動車の電装部品に特化した技術展でしたが、プラスチックへの代替というテーマで、今後のビジネス展開に大いに期待を持てる非常に良い技術展でした。日々高度化していく技術を弊社でも吸収していきながら、お客様のお役に立てるご提案を目指してまいります。
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~第二回コラム~ 成形材料に添加される各種添加剤について・・・
2016.01.20(水)
☆添加剤について
添加剤(配合剤)は、材料への要求性能がポリマーあるいはプレポリマー単独では満たせなかったときに配合します。配合のタイミングは、成形材料を造るときと、さらにこれを成形加工する場合とで、主な添加剤には、①可塑剤・②安定剤・③滑剤・④抗酸化剤・⑤紫外線吸収剤・⑥難燃剤・⑦着色剤・⑧造核剤・⑨蓄電防止剤・⑩架橋剤(硬化剤)・⑪発泡剤・⑫抗菌・防塵剤・⑬相溶化剤、⑭充てん剤などがあります。
それぞれ添加するタイミングや添加剤の量も異なっており、材料への要求性能に合わせて使用します。
今回は①~⑦までの添加剤について解説したいと思います。
①可塑剤
主にPVC(ポリ塩化ビニル)に加えて、ガラス転移温度の低下による加工温度領域の低下と製品の柔軟化に役立つ、各種フタル酸エステル(代表例:フタル酸ジエチルヘキシル(DOP))やリン酸エステル、脂肪酸エステル、エポキシ化大豆油などが用いられる。軟質PVCでは樹脂100部に対して約50部もの可塑剤が転化混練されており、可塑剤添加量の増減により硬度を大幅に調整することができます。
②安定剤
熱安定剤は主にPVCの加工時(通常150℃以上)における熱安定性を付与する。適切な無機塩、金属石けん、有機スズ化合物などが用いられ、添加割合は樹脂100部に対して3部前後です。安定剤の添加なしにPVCを加熱すれば、分子内から塩化水素の脱離を起こし、樹脂は黄色から褐色、さらには黒色へと変化してしまいます。
③滑剤
成形材料の加工に際し、材料間の摩擦や、材料と成形機の金属面との摩擦抵抗が溶解樹脂の流動性を損ねます。滑材はその摩擦抵抗を低下させ、流動性を改善する働きをしてくれます。流動パラフィンやポリエチレンワックスのような炭化水素、ステアリン酸カルシウムのような金属石けん、ほかにアミド類、脂肪酸エステルや多価アルコールエステルなどが滑剤として用いられています。樹脂と相溶性がある滑剤は樹脂100部に対し1部程度添加され組織内部に入り込んで樹脂の流動性を改善します。(内部滑剤)相溶性のない滑剤は0.5部程度加えられ、表面に侵出して金属面との滑りを改善します。(外部滑剤)滑剤にはフィルムなどの表面状態を改善したり、ブロッキング防止の働きもあります。
④抗酸化剤
酸化防止剤ともいわれており、プラスチックは空気中の酸素やオゾンで酸化され、強度の低下、ひび割れ、着色、電気絶縁性の低下を起こしますが、とくに加工時の熱、紫外線、水などによって酸化は促進されます。抗酸化剤はこのような劣化、変質を予防するためのもので、抗酸化剤としてはアルキルフェノール、アルキレンビスフェノール、アルキルフェノールチオエーテル、β,β-チオプロピオン酸エステル、有機亜リン酸エステル、フェノール・ニッケル複合体などがあります。
とくに酸化を受けやすい汎用樹脂はPPとPEですが、ほかの樹脂にも適用されます。酸化防止の機構は、酸化の過程で発生するラジカル連鎖の禁止、発生過酸化物の分解、酸化を促進する重金属の除去のいずれかに基づいています。
⑤紫外線吸収剤
プラスチックやゴムに対して有害な紫外線を吸収して無害なエネルギー(大部分は熱)として放熱させ、劣力を防止する物質です。蛍光性が皆無かほとんどない有機化合物が紫外線吸収剤として用いられ、多くの場合成形材料にあらかじめ練りこまれています。サリチル酸エステル、ベンゾトリアゾール、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒンダードアミンなどが有効です。
⑥難燃剤
プラスチック成形材料は有機高分子なので可燃性のものが多いですが、厳しい難燃性を要求される用途に向けた製品をつくるには難燃剤を外部から添加するか、あるいは難燃性元素を高分子に結合させる必要があります。難燃剤としてはたとえばトリス(β-クロロエチル)ホスフェートのようなリン酸エステルや、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素、また酸化アンチモンやジンクボレートのような無機化合物があり、さらにポリウレタン樹脂との反応性をもつ難燃剤として含リンポリオールがあり、ポリエステルの原料としても使える四塩化無水フタル酸や四臭化無水フタル酸などがあります。
ハロゲン系難燃剤では燃焼に際して起きる気相での遊離ラジカル生成を抑止することによる燃焼防止、リン系難燃剤では防火性のチャー(焼け焦げ・炭)の生成を促して燃焼中の高温部分から未燃焼部の隔離を図り、無機系の難燃剤では結含水を分離して燃焼雰囲気中に水を放出するとともに雰囲気の温度を下げる働きをします。ハロゲン系などのように単独使用では効果が少ないものは、アンチモン化合物と併用して相乗効果を発揮させる場合もあります。
⑦着色剤
着色剤はプラスチックを着色するほか、光の遮断、反射、吸収によって製品に耐光性を付与する役割もあります。少量で鮮明に着色すること、分散性がよいこと、毒性がないこと、耐熱性、プラスチックの分解を促進しない、移行性がない、耐溶剤性、耐薬品性、耐候性などが要求されます。種々の色相を示す着色剤はドライカラー、リキッドカラー、潤性カラー、マスターバッチ、ペーストカラーなど種々の形態で使われます。
プラスチックの着色には基本4種類の方法がありますが、(マスターバッチ・練り込み法・顔料表面コート・ドライブレンド)黒着色などはマスターバッチまたは練り込みが多く、カラフルな色は色の選択が比較的容易な表面コート法が中心となっています。
プラスチックは本当に奥が深いですね。ここまでで半分の添加剤の解説が終了しました!
次回のブログ更新で残り半分の解説をしたいと思います。長々とお読み頂きありがとうございました。
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今年一年ご愛顧を賜りまして大変感謝申し上げます。
2015.12.24(木)
当社製品につきましては、毎々格別のご愛顧お引き立てを賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、本年度の年末年始につきましては、甚だ勝手ながら下記のとおり休業させていただきますので、ご高承賜りますようお知らせ申し上げます。
年末年始休業日
平成27年12月27日(日曜)から
平成28年1月4日(月曜)まで
~第1回コラム~ 熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との違い・・・
2015.12.07(月)
テーマ:熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との違い
今日はよく質問を頂きます、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂との違いについて、各樹脂の特徴や名称などと一緒にお話ししたいとおもいます。
○熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は、加熱すると軟化・流動して可塑性を示し、冷却すると固化します。ここで可塑性とは、材料が応力を受けて弾性限界を超えた変形を自在に行い、応力を除去しても形状を保持する性質のことです。一方で弾性限界が高い材料は大幅に変形しても復元し、エラストマー(ゴム)と呼ばれプラスチックと区別されますが、近年、熱可塑性を示すエラストマーの一群が発展し熱可塑性材料の仲間入りをしています。
主要な熱可塑性樹脂には石油化学工場で大量生産され、安価で、種々の方面に広く用いられる汎用プラスチックと呼ばれ、PE,PP,PVCおよびスチレン系樹脂(GPPS,HIPS,AS,ABS)が四大汎用プラスチックでわが国プラスチック生産量の7割程度を占めています。
また、汎用プラスチックよりも強度と耐熱性に優れた工業部品材料であるエンジニアリングプラスチック(通称エンプラ)があり、1956年にアメリカのデュポン社が開発したPOMを「金属を代替できるエンプラ」と称したのが最初で、近年「エンプラとは構造用および機械部材用に適した高性能プラスチックで、主に工業用途に使用され、長期間の耐熱性が100℃以上」さらに「引張り強さが50MPa以上、曲げ弾性率が2400MPa以上」という定義が提案され、加えて衝撃・疲労・クリープ・摩耗などに強く、寸法安定性も概して優れています。エンプラは、さらに「汎用」エンプラと、より耐熱性に優れた「特殊」または「スーパー」エンプラとに分けられます。汎用エンプラにはPA/POM/PC/PBT/m-PPE/GF-PETがこれに準じ、スーパーエンプラはPPS/PAR/FR/PAI/PI/PEI/PEK/PEEK/LCP/PSF/PESを指し、耐熱性に優れるが価格は高くなります。この内PPSは汎用エンプラに準じるという見解もあります。
熱可塑性樹脂が熱硬化性と異なる点は、成形工程で化学変化とか分子量の変化を原則的に起こさないことで、射出成型や圧縮成形の成形サイクルは一般に短く、また押出成形やカレンダ加工など同一断面形状の成形品の連続生産に適しています。フィルム、シート、チューブ、中空成形品など一次成形品を再度加熱して、最終形状を与える二次加工や溶接、成形不良品やスクラップの再成形が可能で、加工上の利点も多いですが、製品の硬度、耐溶剤性、耐熱性などは熱硬化性樹脂製品より劣るといえます。
○熱硬化性樹脂
熱硬化性樹脂は官能基をもつプレポリマー(重縮合中間生成物)を主成分とする反応性混合物で、熱可塑性と同じく加熱により軟化・流動しますが、次第に三次元網目構造を形成する架橋反応を起こして硬化します。種類により、骨格となる化学構造や官能基の種類が異なり、成形加工法も製品物性も相異します。中には硬化促進剤を用いて熱を加えることなく硬化する樹脂系もあり、(例:ポリウレタン樹脂、ハンドレイアップ用不飽和ポリエステル樹脂など)これらも同じく熱硬化性樹脂と呼ばれます。
熱硬化性樹脂の成形工程で、液状の成形材料は常温で容易に型内注入や強化材含浸ができ、固体成形材料でも加熱して軟化流動させ加圧化に賦形ができます。しかし時間経過とともに熱や触媒の作用による三次元硬化反応が始まり、組織が不可逆的に変化する点が熱可塑性と異なります。硬化が十分進めば高温でも変形しないため、成形品は金型を冷却することなく取り出せ、必要とあれば後硬化(ポストキュア)させます。最終品はもはや不溶・不融です。硬化樹脂は三次元網目構造のため表面硬度が高く、耐溶剤性、耐熱性、機械的強度などの諸点で熱可塑性樹脂より優れるとされていますが、反面、工場で排出されるスクラップや廃棄製品のリサイクル再成形はできません。
代表とされる熱硬化性樹脂にはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられます。
○まとめ
プラスチックの種類を大別すると、チョコレートとクッキーとに分かれるとよく言われますが、ここまでのご説明でどちらの樹脂がチョコレートかクッキーかがお分かりいただけましたでしょうか? 昨今では単にコストパフォーマンスだけの観点にとどまらず、各樹脂の特徴を生かした製品設計やそれに伴う環境側面への配慮なども望まれており、21世紀に相応しい高度なプラスチック技術の確立が期待されています。
弊社でも各メーカー様から頂くお見積りの依頼がより高度化しており、今後もお客様のご期待に応えられるよう日々技術を磨いてまいります。
以上で第1回コラムを終わりたいと思います。
今後もプラスチックの知識について頻繁に更新していけたらと思いますので、宜しくお願い致します。
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